NHK 『ザ・プロファイラー』アムンゼンを見ました

ノルウェー人のアムンゼン。人類初の南極点に到達した人物として、世界史で習った記憶がかすかにありますが、その生涯には様々なドラマがあったことを知りました。

 

もともとアムンゼンは、医学部生で、母のことを思うと探検家になるとは言い出せなかったそうです。そんなある日、母が死んでしまう。そこで、アムンゼンは探検家になることを決意し、大学を中退。当時の航海では、探検の隊長と船の船長が別々で、二人が対立して収拾がつかず、隊員全員が路頭に迷ってしまう、なんてことがあったそうです。これを解決するために、アムンゼンは、「自分が隊長と船長両方やろう!」と決意。まずは船長の資格を取ったそうです。

探検家と聞くと自分とは全く違う存在のような気がしますが、母のことを思って言い出せないアムンゼンのエピソードを聞くと、少し親近感がわきますよね。

 

そんなアムンゼンが最初に目指していたのは北極点だったそうです。

目標を南極点に変更することになったのは、アメリカのピアリに先を越されてしまったため。

「誰もやったことのないことを自分が成し遂げたい」

探検家精神を持つアムンゼンとしては、すでにピアリが到達した北極点よりも、誰も到達していない南極点の方に惹かれたのではないでしょうか。

ただ、当時南極点には、イギリスが、国家の威信をかけて、スコットを先に派遣しており、アムンゼンも南極点を目指すことになれば、ノルウェーはイギリスと対立してしまうことになります。

「もし、ノルウェー政府に南極点を目指すことを知られれば、イギリスとの対決を避けたいと考えた政府が、自分たちへの資金援助を止めてしまうかもしれない」

そう考えたアムンゼンは、周りの数人にしか南極点を目指すことを知らせず、ノルウェー国王にさえ、あくまで北極点を目指していると装っていたそうです。

 

南極点を目指して出航したアムンゼン。スコットとの競争になります。

結局先に到達したのはアムンゼンなのですが、その理由が興味深かったです。

イギリスのスコット達は、馬や雪上車を主な移動手段として使いましたが、アムンゼン達は犬を使ったそうです。

イギリスの雪上車はエンジントラブル、馬は寒さにやられてしまったが、アムンゼンの犬たちは違いました。犬は軽いため一度氷にはまっても、すぐに抜け出せるという利点もあったらしいです。

 

さらにアムンゼンは、食料として使うために、途中24匹の犬を殺すように部下に命令します。極限状態を生き抜くための非常な決断。アムンゼンは銃撃の音を聞きたくなくて、わざと大きな音を立てていたそうです。

一方のスコットは南極点に到達したとき、そこにすでにノルウェーの国旗が立っているのを見て失意の中帰還。結局帰還途中で遭難死してしまいます。

非常時の食料の備えがあったことは、アムンゼン達が生きて帰還することができた理由のうちの一つではないかと思います。

 

 

その後、イギリスでは、スコットの死は、アムンゼンが助けなかったのが原因だとか、アムンゼンとの競争に焦ったのが原因だとか、アムンゼンを批判する声が高まりました。

一方のノルウェーは、スウェーデンから独立したのが1905年。独立後間もない時期だったため、アムンゼンは国の英雄として迎え入れられ、ノルウェーナショナリズムを高めたとされています。

 

1920年代以降は飛行機が発達。アムンゼンは飛行船を使って、北極点に到達した。これにより、アムンゼンは人類史上初の両極点の到達に成功した人物になりました。

これを機にアムンゼンは探検を辞めると宣言。恋人もできて安定した生活を送りかけたその矢先、一つの知らせが届きます。

北極点到達の際飛行船の船長だったイタリアのノビレが遭難したのです。アムンゼンは助けに向かうと言って飛び立ちます。

しかし、彼がその後帰ってくることはなく、そのまま行方不明になってしまいます。

 

ここまで、アムンゼンの生涯を簡単に振り返りましたが、最後まで彼は探検家だったんだなと深く感じました。

 

ちなみにテレビでは言及されていませんでしたが、アムンゼンとノビレは一度関係が悪化しているらしいです。

それでもアムンゼンは救助に向かった。

そこにはスコットの死に対して後悔の念に駆られていたからなのか?

同じ北極点到達という偉業を達成した者としてノビレを思う気持ちがまだあったのか?

真相は分かりません。ただ、分からないからこそ、今でも惹かれる人がいるのだと思いました。

 

ちなみに、1956年南極に作られたアメリカの観測基地は、二人の探検家に敬意を表して、「アムンゼン・スコット基地」と名付けられたそうです。今でも二人の歴史は受け継がれていると感じました。

 

また、番組ではところどころ、同時代に南極を目指した白瀬矗(しらせのぶ)の話も出てきました。木造漁船に蒸気機関をくっつけた船「海南丸」で、南極点を目指しましたが失敗。

後にアムンゼンが来日。アムンゼンいわく「どうしても会いかった」とされる白瀬と会った時、アムンゼンは「海南丸、海南丸」と呼んだらしい。

その時、白瀬は目に涙を浮かべていたとか。

同時代に南極点を目指した者同士、思うものがあったのだと思います。

 

補足ですが、番組表のところに[終]と書いてあったので、プロファイラー終わっちゃうのかなと思いましたが、10月からシーズン10が始まるそうです。

半年ごとの放送だったんですね。最近見始めたので知りませんでした。

これからも楽しみにしたいと思います。